セミナー備忘録

デザイン研究科(School of Design Research)のセミナーでMicrosoft Research CambridgeのRichard Banks氏による講演があった。簡単にメモを残す。

1. Microsoft Researchの中でも、社会科学やエンジニアリングと比べてデザインの背景を持つ人が未だ少数派であることが意外だった。デザインの博士号(Design PhD)を持つ人となれば更に少ない。RCAからはIDE修士を卒業した人が何人か就職していて、デザイナーとしてのアプローチを期待される役職に就いているらしい。 

2. CHI学会に成果を発表することが頻繁にあるが、技術的・方法論的な議論に偏る傾向があるという。研究の中で生まれた人工物そのものや、なぜそれを作る意味があったのかというデザイン過程を十分に議論できないという問題があるそうだ。RTD (Research Through Design) 学会では展示とプレゼンテーションを交えたアプローチが取られており、よりデザインの過程に重きを置いた議論ができている。

3. そもそもデザイン博士は未だ若い領域で、何を以ってして博士号に値するかという基準に一貫性があるわけではない。デザイン研究では、再現可能性が高く保証されている分野(科学や工学)に比べて、より混沌として不明瞭なプロセスの中で生まれる非線形な発見や創造に関する知識が面白いところであり、価値がある。これに関してはRTD学会によるRCAの元学長であるChristopher Frayling氏のインタビューに学ぶところが多い。