refleCTion

昨年度まで年一回のペースで行われていたDesign Research Student Conferenceが今年から二回に増え、その一回目が明日から三日間に渡り行われる。デザイン研究科内各専攻のMPhil/PhDの学生が一人最大30分の持ち時間の中で研究発表し、その後質疑応答が設けられる。「あくまで"Design Research"なのだから、パワポ的発表に『陥らず』、プロトタイプ、デモ、実験などの実践を交えて発表するように」というデザイン研究科長からのリクエストもあった。学生といってもRCAの博士課程では年齢層の幅は広く、学士・修士からストレートできた若い層から、一度大学の学長やNASAのエグゼキュティブとして働いた後入学してきたような年配の層まで様々だ。テーマも関連してくる領域もバラバラだが、何かしらデザインすること(実践 = Practice)とそれを見返すこと(省察 = Reflection)を通して新たな知識を生み出そうとしていることは共通している。実践と省察については、RCAのデザイン研究科で教鞭を執っていたRanulph Glanvilleによるサイバネティクス的な考察が大変エレガントで且つ興味深い。

 

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RCAは大学院全体としてPractice(実践)からResearch(研究)へやや移行気味の傾向があるようだ。工芸的・職人的スキルを鍛える場というよりも、社会問題や科学技術により関連のある研究課題を扱う場にシフトしようという流れが見られる。勿論これは大学院独断の判断というよりは寧ろ年々厳しくなる国からの芸術系への助成金も背景にあるはずだ。藝術大学院として科学技術に対するリテラシーを一旦全体的に持ち上げようというのは有益で不可欠な方向性だと思う一方、アートスクールとしての自由を担保することも重要になってくるように思える。高い技巧や、そこから生まれる美学や、実験的な実践や、質的で経験的な、言語化したり研究したりしにくいけれども試行錯誤の価値のあるものが生まれる土壌を絶やすべきではない。純粋な技術系・デザイン系機関との違いはそういう混沌とした、非理性的・非論理的・非科学的な自由を内包できる環境にあると思う。