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時計屋

7分ほどの徒歩と若干のバス待ち時間を除けば、バス一本で大学に行けてしまう今の家。徐々に行動範囲が広がっていくにつれ、都心から付かず離れずのこのロケーションはなかなか悪くないと思えてくる。住めば都なのだと言えなくもないが、それなりでなければ勝手に都が立つというものでもない。

日によってばらつきはあるものの、バスは平均して片道40分ほどかかる。(強がりではなく、これくらいはロンドンの中心部に通う学生にとっては当たり前のことらしい。)そんな道中の真ん中のあたりにアンティーク家具屋がいくつか並ぶ通りがあって、いつも車内からちらっと気になる。先週、その中でも特に気になっていた時計屋に思い切って足を踏み入れてみた。店の前に立って初めて分かることは、そこにあった二店舗とも、まず入り口のベルを鳴らさないと中へ入れてくれない。仕方なくベルを鳴らして奥からの店員を待つものの、自分のようなアンティークなど手も出せそうにない学生が目に入った瞬間に入店を断られるのではないかという、嫌な予感がする。ところが意外にも、ここ2ヶ月半で諦めに慣れきった覚悟とは裏腹に、どちらの店でも快く出迎えてもらうことができた。片方はおそらく職人さん、もう片方は事務系の方で、二人とも流暢に説明をなさる。

大小さまざまの振り子時計に囲まれた空間は独特の魅力があって、それぞれの時計が微かな音でチクタクと秒針を動かしている。うろうろと店内を歩いて自分の場所が変わるごとに、聞こえてくる時計の音がダイナミックに変わる。振り子はせわしなく動くものもあれば、ゆったりとスイングするものもあって、個性の幅がとても広い。機構がむき出しのものに対しては、少し触って邪魔をしてみたくなるような好奇心をくすぐられる。総じて、時間を正確に測ってそれを示すという唯一の任務(であり大義名分)が、それらの反復運動をずっと説得力のある、神秘的なものにさせていた。